通常、CiscoスイッチはIOSイメージを読み込み、正常に起動します。しかし、IOSファイル破損や設定の問題により、ROMmonモードで起動することがあります。ROMmonモードはブートローダ環境で、最低限のコマンドしか利用できません。本記事では、ROMmonモードに入る原因と復旧手順を解説します。

1. ROMmonモードとは

  • IOSが読み込めない状態で起動する最低限のOS環境
  • ファイル操作、TFTPダウンロード、環境変数設定などが可能
  • 復旧作業やパスワードリカバリ時に利用

2. ROMmonモードに入る主な原因

  • IOSイメージファイルの破損または削除
  • ブート変数(BOOT変数)が未設定または誤設定
  • パスワードリカバリモードでの再起動
  • フラッシュメモリの障害

3. 基本コマンド例(ROMmonモード)

rommon 1 > dir flash:
rommon 2 > set
rommon 3 > tftpdnld
  • dir:フラッシュメモリの内容表示
  • set:環境変数(IP設定やゲートウェイ)確認
  • tftpdnld:TFTPサーバからIOSをダウンロード

4. パスワードリカバリ手順

  1. ROMmonモードで起動
  2. confreg 0x2142 を入力して起動時にstartup-configを無視させる
  3. resetで再起動
  4. 起動後、enableで特権モードに入り、必要なパスワードを変更
  5. config-register 0x2102 に戻してwrite memoryで保存

5. IOS再インストール手順(TFTP経由)

  1. TFTPサーバを用意し、IOSイメージファイルを配置
  2. ROMmonで以下を設定: rommon 1 > IP_ADDRESS=192.168.1.10 rommon 2 > IP_SUBNET_MASK=255.255.255.0 rommon 3 > DEFAULT_GATEWAY=192.168.1.1 rommon 4 > TFTP_SERVER=192.168.1.100 rommon 5 > TFTP_FILE=c2960-lanbasek9-mz.150-2.SE8.bin
  3. tftpdnldコマンドでダウンロード開始
  4. ダウンロード完了後、boot flash:ファイル名で起動
  5. boot system flash:ファイル名を設定して保存

6. 起動後の確認

Switch# show version
Switch# show running-config
  • IOSバージョン、起動設定を確認
  • ブート変数が正しいかshow bootで確認

7. 運用上の注意

  • IOSファイルは事前にバックアップを保管
  • ブート変数を誤って消さない
  • パスワードリカバリ手順はセキュリティ管理下でのみ実施
  • フラッシュメモリの寿命にも注意

8. まとめ

ROMmonモードはトラブル時の復旧に不可欠な機能です。パスワードリカバリやIOS再インストール手順を事前に理解しておくことで、障害発生時にも迅速な対応が可能になります。バックアップと設定の適正管理が、復旧作業の成否を左右します。