静的ルーティングは、管理者が明示的に経路を指定する方法です。小規模ネットワークや経路が固定されている環境では、シンプルかつ安定した経路制御が可能です。本記事では、Ciscoスイッチでの静的ルート設定方法と動作確認手順を解説します。
目次
1. 静的ルーティングの特徴と用途
- 経路情報を手動で設定するため、ルーティングプロトコルが不要
- ネットワーク構成が変わらない環境で有効
- デフォルトルート設定やバックアップ経路として利用可能
2. 基本構文
ip route <宛先ネットワーク> <サブネットマスク> <次ホップIPアドレスまたは出力インターフェース>
例:192.168.20.0/24 への経路を 192.168.10.2 経由で設定
ip route 192.168.20.0 255.255.255.0 192.168.10.2
3. 設定例
VLAN 10(192.168.10.0/24)とVLAN 20(192.168.20.0/24)が別スイッチにある場合の経路設定例です。
Switch# configure terminal ! VLAN 10 SVI設定 interface Vlan10 ip address 192.168.10.1 255.255.255.0 no shutdown ! VLAN 20 SVI設定 interface Vlan20 ip address 192.168.20.1 255.255.255.0 no shutdown ! VLAN 20ネットワークへの静的ルート ip route 192.168.20.0 255.255.255.0 192.168.10.2
4. デフォルトルートの設定
インターネットや未知のネットワークへの経路をまとめて指定する場合はデフォルトルートを設定します。
ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.10.254
5. 確認コマンド
Switch# show ip route Codes: C - connected, S - static, R - RIP, ... S 192.168.20.0/24 [1/0] via 192.168.10.2 C 192.168.10.0/24 is directly connected, Vlan10
S
は静的ルート、C
は直接接続を意味- pingやtracerouteで到達性を確認
Switch# ping 192.168.20.10 Switch# traceroute 192.168.20.10
6. 冗長化設定(Floating Static Route)
優先度(AD値)を変更して、バックアップ経路として設定できます。
ip route 192.168.20.0 255.255.255.0 192.168.10.3 10
AD値が低い経路が優先され、障害時に自動的に切り替わります。
7. 運用上の注意
- 経路変更時はすべての関連機器の設定を更新する必要がある
- 大規模環境では管理が煩雑になるため動的ルーティングの検討も必要
- 誤設定による経路ループに注意
8. まとめ
静的ルーティングは設定が簡単で安定性が高く、小規模ネットワークや固定経路で活躍します。デフォルトルートやバックアップ経路と組み合わせれば、柔軟かつ信頼性の高いネットワーク構成が可能です。