ネットワーク障害対応というと、設定やログ解析、パケットキャプチャを思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、物理層(Physical Layer)で発生する問題は、設定だけでは見抜けないケースが少なくありません。現場では、機器が発する音や光、熱といった“感覚的なサイン”が重要な手がかりになることがあります。

この記事では、物理層トラブルを「音」「光」「熱」という3つの観点から診断する方法と、すぐに使えるチェックリストを紹介します。

1. 物理層トラブルの種類

物理層は、ケーブル、コネクタ、光ファイバ、SFPモジュール、電源や冷却装置など、信号伝送の土台を支える層です。トラブルは大きく以下のように分類できます。

  • 機器故障型:ファン停止、電源ユニット異常、SFPモジュール劣化
  • 環境要因型:過熱、湿度、振動、埃による接触不良
  • ケーブル品質型:断線、曲げ半径超過、クロストーク、減衰

2. 音で診断する異常

異常時の機器は、普段と異なる音を発します。耳を使った診断は、意外と早期発見に役立ちます。

2-1. ファン異音

冷却ファンが摩耗や埃の蓄積で高音を発することがあります。通常時の音を覚えておけば、回転数や音質の変化で異常を察知できます。

2-2. PoE過負荷音

PoEスイッチが最大給電状態になると、電源回路から「ジー」という負荷音が発生する場合があります。長時間続く場合は給電設計の見直しが必要です。

2-3. スイッチング電源のコイル鳴き

負荷変動や経年劣化により、スイッチング電源部から高周波音が出ることがあります。耳障りな高音が継続する場合、電源ユニット交換を検討します。

3. 光で診断する異常

LEDや光信号の変化は、物理層の健全性を示す重要なサインです。

3-1. LEDインジケータの異常パターン

リンクアップ・ダウンの頻繁な点滅や、橙色固定点灯はケーブルやSFPモジュールの問題を示すことがあります。

3-2. 光ファイバの可視光リーク

光ファイバ破損部から赤色光が漏れている場合は重大な損傷です。安全のため直接覗き込まず、光源検出器を使用します。

3-3. SFPモジュールの光出力低下

光パワーメータで規定値を下回った場合は、モジュール交換やケーブル清掃が必要です。

4. 熱で診断する異常

温度変化は物理層異常の兆候です。手で触れるだけでも異常を感じ取れる場合があります。

4-1. ケーブル過熱

PoE給電時にケーブルが異常に熱い場合、導体径不足や結束状態による放熱不良が原因となります。

4-2. ラック内温度異常

吸気口と排気口で大きな温度差がある場合、エアフローの見直しが必要です。

4-3. サーモグラフィによる診断

サーモグラフィを使えば、発熱部位を一目で確認できます。特に電源ユニットやSFPポートの診断に有効です。

5. 一次診断チェックリスト

現場で素早く確認できるチェックポイントをまとめます。

  • ファンや電源部からの異音
  • LEDインジケータのパターン
  • 光ファイバの破損や光漏れ
  • ケーブルやラック周辺の温度
  • サーモグラフィや温度センサーでの発熱確認

6. まとめ

物理層のトラブルは、設定やログだけでは見抜けないことがあります。音・光・熱といった感覚的な情報は、現場対応のスピードと精度を高めます。機器に触れ、観察する習慣を持つことで、障害の早期発見や予防につながります。